「線」が雑すぎる【映画】果てしなきスカーレット【レビュー】

映画レビュー

 中世デンマークを主な舞台とする、新たな試みで描かれた細田守監督期待の新作。

のはずなのですが、公開間もないはずの200席ほどある映画館、私含めて観客は4人。

 宣伝はある程度されていたはずなのですが・・・。

 感想としては、独特な世界観が本作ではかなりキツイと感じ、一部雑な描かれ方に腹立たしさも感じました。

「点」でできた脚本

 描きたいポイント、つまり「点」は作り込もうとしているが、それを合理的に結ぶ「線」が雑という感じです。

 描写が欲しい場面が飛ばされていたり、こちらが腑に落ちないまま登場人物だけであっさり納得して話が進んだりと、急な展開や場面転換、登場人物の突拍子もない言動が多く見受けられました。

 表現したい・描きたいものがポイントであるのは良いのですが、それ以外の部分の雑さが今作では目に見えるくらいのものであったと感じます。

作画・映像

 作画、安定せず。

 良いところと悪いところの差が大きく、さらに静止画も多い。

 ストーリーと照らし合わせると、「ここはしっかり描きたい・強調したい場面では作画も力が入っているが、そうでなければ手抜きにさえ見えるほど悪い」と言う構図になっているように見えます。

 また、映像では実写とアニメの合成にも違和感がありました。

 1つ1つの素材は悪くないのですが、まるで実写の画面にキャラクターなどのアニメ部分のレイヤーを、何の加工もせずおいているような感じで、アニメ部分がかなり浮いて見えました。

キャラクター

 全体的にキャラクターの人物像・発言が浅く感じます。

 主人公二人をはじめ、発言が衝動的というか、感情論のものが多い。

 しかも、いろいろな感情が混ざって紡ぎ出される言葉ではなく、その場の感情やありきたりな倫理観を、ただその時々で吐き出しているよう。

 挙句、そんな言動にあっさり心動かされる輩がいるときたもんで。

 こんな、

言ったら+聞いてくれて=心動かされた

みたいな単純な足し算のようなやり取りばかりだと、どうしても不自然で単調に見える。

 その繰り返しで進んでいくと登場人物たちが、ただただあらかじめ用意された結果に向かうために動かされている駒のように見えてしまいます。

 フィクションなのだから実際はそうなんですが、観てる人間からそう見えてしまっては良くない。

スカーレット

 顔g表情豊かな復讐に燃える王女。

 しかし、聖との出会いで変わっていくというもの。

 復讐を誓い死者の世界を進んでいくまではいいのですが、聖に出会ったあたりから変になっている感は否めない。

 聖とは生きる時代も価値観も違うのだから、やはりそんなすぐには変わらない・・・

と思いきや、初めこそそれっぽく突っぱねているものの、割とあっさり感化されている。

 散々憎しみを糧に歩んできたと言うのに、あんな押し付けがましい正義感に影響されるて、

 あんたの数年間どんだけ軽いねん

と思わざるを得ませんでした。

 キャラクターとしては、表情も言動も豊かなのですが、自分のうちにあるものを全て説明せんと言わんばかりに、全部行動や言葉で出してしまう。

 そのため、こちらの想像する余地がなく、深みの無い薄っぺらな人物に見えてしまうのが残念なところ。

 スカーレットもそこそこではありましたが、そんなのは聖くんに比べれば大した問題ではないと個人的には思います。

 初めから不自然さの塊でした。

 彼が登場した際、死者の世界に来たばかりという感じでスカーレットの前に現れるのですが、異世界に飛ばされたというのに焦る様子が微塵も無い。

 怪我をした敵にも温情を掛け手当てをする場面があるのですが、正義感に駆られてやったというより、

 「あ、怪我したんですね、治します。」

といった感じで、少しの躊躇もなく機械的にやっている印象。

 正直、この時点でやや不気味。

 「正義義感溢れる頑固な看護師の青年」という設定なんだろうと思われるのですが、落ち着いているだとかマイペースだとかいうより、

 感情が死んでいるのでは?

と疑いたくなるような表情・所作・声質で、最後までアンドロイドかと疑ってました。

 それだけならまだいいのですが、そのくせ衝動的な行動をしだす。

 酷かったのが敵が待ち構えている場所を見つけた時。

 敵意満々の相手の軍勢に策も無いのに突っ込んで行って、身を守る術もないのに「話し合おう!」と大声で捲し立てる。

 結果、相手から攻撃を受け、スカーレットが負傷。

 で、それを自分が治療。(すごくマッチポンプ)

 しかも、その場で救急バッグを開け処置し出す。

 ハプニングで敵の攻撃が中断しているとはいえ戦場のド真ん中、いつ攻撃されてもおかしくない場所で、である。

 お前、ほんとに看護師かよぉ!!?

 素人ながらにそんなことを思いました。

 また、途中何度か殺し合いはいけないと言うシーンもあるのですが、それも心から言っているという感じがせず、ただ事務的に言っている感じ。

 しかもいうタイミングも悪いもんだから、こちらの神経を逆撫してくる。

 不気味さと腹立たしさを両立するハイブリットキャラ、それが聖くんである。

ミュージカルシーン

 2つほどあります。

 正直言うと、どちらもキツかったです。

・視覚的に虚無な民謡ダンスシーン

 1つ目は死の世界で出会った、遊牧民と思しき人々と交流した際に流れたシーン。

 どこかの民謡に合わせて、踊り手のおばちゃんと聖orおっちゃんが踊ると言うもの。

 これがなかなかしんどい。

 まず、突然始まるもんだから面食らう。

 一応終わりに「これにはこう言う意味があってねぇ」と言う旨の説明はあるのですが、それは始まる前か、そうでなくても早い段階で言ってもらわないと意味がわからない。

 この踊りの意義自体も問題ですが、シーンの見せ方が特に悪いと感じます。

 と言うのも、二人が他の人たちの前に出て並んで踊る際、その二人をど真ん中に置いて、SNSの投稿動画のように引きで画面に収めている。

 これを映画でやられると何というか・・・非常に滑稽である。

 踊りを通して感謝を伝えているのなら、体の一つ一つの部位を使ってそれを表現しているのを示すために、よく動く部位や表情、象徴的な衣装の動きなど、各部位に寄って写すだとか、二人いるのなら奥行きを使って対比させながら写すだとか、やりようはいくらでもあったろうに。

 また、来ている10人前後の観客の描かれ方も、雑な作画を静止画で左から右に写していくだけという手抜き感。

 シーン自体をない方が良いとまでは言わないが、やるのならこう言う合間のシーンも力入れてやって欲しいところ。

・現代でのミュージカルシーン?

 あ…ありのまま起こったことを話すぜ!

 『聖が、俺のいた世界には、こう言う曲があるとスカーレットに弾き語りを聞かせたところ、彼女の表情が急に強張り始めたと思ったら視界を炎が覆う。直後宇宙空間ともネットワーク空間ともわからない空間を通り抜け、行き着いた先は現代日本の街中らしき場所で人々が踊り狂っている世界。そこでその世界の聖と、その世界にいたらなっていたであろうもう一人の自分が街の中心で踊っており、スカーレットはそれを見つめているのであった』

 な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何があったのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…

 ある意味、本作一番の見せ場です。

 私は観ている間、あまりにもいたたまれなくなり、ありもしないシークバーをスクリーン下に探していました。

総評

 色々書いてきましたが、作品としてよく無いと思う最大の要因は、前述した「線」の部分を雑に扱ったことにあると個人的には考えます。

 大筋は良くも悪くもありがちな流れではあるし、各キャラクターや背景の設定などは「文字に起こせば」、特別悪いとは思いません。

 ただ、「線」となる見せ場ではないインターバルの時間などを、雑に作ったり無理矢理な展開の仕方にしたのは、かなり悪かったと思います。

 その雑さが共感できない部分へのストレスを助長しているように感じます。

 たとえありきたりだろうが共感されない内容だろうが、思い入れが無い・描きたくないようなところも丁寧に作っていけば、好き嫌いはあれど良い作品にできた可能性もあるのではないか、そう思わずにいられません。

評価

 評点     ・・・  1.5 / 5

 映像     ・・・  2.5 / 5

 音楽     ・・・  1.5 / 5

 脚本     ・・・  1 / 5

 キャラクター ・・・  1 / 5

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