アニメ「マクロス」シリーズなどでお馴染み、河森正治監督作品。
「承認欲求」と「他者の視線」の間で悩む女子高生を主人公とする、現代のネット社会を舞台に描いた異世界エンタテイメント。
「マクロス」好きならワンチャンあるかも。
ですが、個人的には正直キツかったです。
あらすじ
どこにでもいる普通の女子高生・前澤栞は、ある日突然スマホの画面が割れてしまい、気がつくと異世界の横浜にいた。
そこで彼女の前に、小森と名乗るしゃべるウサギのスタンプが現われ、「あなたはスマホの中に閉じ込められた」と告げる。
一方、現実世界では、姿を消した栞と入れ替わるように、もうひとりの彼女「SHIORI」が現れる。
SHIORIはSNSを駆使して自由奔放に振る舞い、やがて世界を巻き込む騒動の中心になっていく。
栞は、SHIORIに現実を乗っ取られる前に、奇妙なスマホの迷宮からの脱出を目指すが……。
チグハグな脚本
とっ散らかった物語を強引に繋げたような脚本。
初めは、SNSなどで使われるスタンプが生息する世界に迷い込み、その世界からの脱出と現実世界に出現したもう一人の自分を止めようとするもの。
これだけなら、まぁ、分からないではない。
「承認欲求」と「他者の視線」という、現代のネット社会にある問題の一つにフォーカスし、物語を展開するのは共感しやすいし分かりやすくもある。
他の要素で賛否は分かれても、脚本としては有りでしょう。
ただ、その後の展開の中で、SFの様相を呈したかと思えば、恋愛要素が出てきて、大型ロボット対決が始まったと思えば、歌で世界を救い出す。
まだ本作を見ていない方にお聞きしたい。
上記のような内容でまとまった作品を描けると思いますか、と。
前半で作り上げた舞台を、後半の展開でひっくり返してしまっている。
恋愛要素ぐらいはいいでしょう。
しかし、これも前半ワンシーンくらいしか出てきていない子が、急にフォーカスされる。
立ち位置的に大事な人物っぽいので、途中で出てきても違和感ないように匂わせくらいはしなければ、モブが急に前に出てきたようで不自然である。
ただ、それより問題なのがその後。
大型ロボットとライブシーン。
既視感がある。
そう、「マクロス」である。
しかも、結構まんまそれ。
「マクロス」の個人的なイメージをざっくりいえば、『戦闘機や人型の搭乗機で戦い、最後は歌を歌って何とかなる』というもの(語弊があったらすみません)。
監督が監督だから、クライマックスは自分の得意な土俵に持っていきたかったのでしょう。
ただ、「マクロス」の世界は、ロボットでの戦いや歌による救済があってもおかしくない世界観が作られており、だからこそ、その中でそういう展開になっていくに問題がないのである。
しかし、本作の舞台は、あくまで現代社会である。
ロボットバトルに関しては、異世界とはいえ急すぎる。
そういうのが出てきてる世界なら納得なのですが、そういう描写は一切無いので、内容以前にこの事象自体が作品から浮いている。
ライブに関しても同様で、かなり急に出てきた要素である。
「バズったダンス動画が〜」みたいな展開こそ出てきたが、踊りはしても歌う描写はないし、歌う行為自体も「SHIORI」が唐突にやり始めたことである。
「マクロス」のように、歌が人物の人生に影響を与えてるわけでもなければ、ここに至るまでに歌自体が社会に影響を与えている訳でもない。
そのため、無理矢理ねじ込んだ要素な感じが否めない。
ラストも、いい感じに終わろうとしているが、有耶無耶になっている部分が多すぎて消化不良。
冒頭で悩んでいた事、ほぼ解決してないような・・・。
理解に苦しむ登場人物
全体的に短絡的、または突発的に動く人物が多い。
展開的に言えば、事の発端ぐらいにはそんな行動をする人物も必要だとは思えます。
しかし、もうちょっと考えさせて動かすだとか、何かさせるにしたって理由ぐらいはちゃんとしたものを与えてやって欲しいもんです。
またその一方、感情的な人物が多いのかと思えば、割に物語が進展するような状況に直面した際の反応は淡白。
物語の進行をスムーズにする為かもしれませんが、味気ないというか、人間らしさが欠如したような見え方をしてしまいます。
声優陣
声優の方の演技については、どうこう言えるほどは分からないつもりです。
それでも、主要人物の演技については自然とは受け入れられないものがありました。
特に、大きな声を出すシーンではそれが顕著で、まるで「近所からのクレームを気にしながら大声を出す演技をしている」ような感じがします。
出演者の名前を見ても、少なくとも声優業に対しての経験は浅い方々のようなので、ある程度は仕方ないのでしょうが、それにしてももうちょっとどうにかならないものか。
そして、ちょい役・脇役の声優陣の豪華なことよ。
映像・音楽
映像は良い。
音楽も、良し悪しは具体的には判断できませんが、少なくとも悪くはなかったのではないかと思われます。
クライマックスのライブのシーンでは、映像・音楽の両方に力を入れていて、迫力がありました。
ただ、一部とはいえ「マクロス」を観た事がある身としては、二番煎じ感というか既視感があり、目新しさが感じられなかったというのが正直なところ。
総評
新しく描いてみたかった事と、得意分野で描きたい事の、どちらも描こうとしてごちゃごちゃになってしまったような作品。
社会を風刺するようなメッセージ性を含みつつ、自身の色を出したくもあったのだと思われます。
ただ、全体のバランスを考えず欲張ってしまっては良くない。
前半の流れのままで物語を展開していくか、後半の展開ありきで世界観を構築していれば、ある程度はマシだったかもしれないと感じます。
「マクロス」を知っていて、かつ、ノリについて行ければ気に入るかもしれません。
しかし、個人的には正直、「果てスカ」ばりにキツかったです。
新年一発目にはしたくなかったなぁ・・・。
評価
・評点 ・・・ 1.5 / 5
・脚本 ・・・ 1 / 5
・映像・音響 ・・・ 3 / 5
・キャラクター・演技 ・・・ 2 / 5


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