武田一義氏原作漫画の映画化作品。
戦時中のペリリュー島を舞台に、そこで起こったことを親しみやすいキャラクターたちで描いたフィクション作品。
緩く描かれるのかと思いきや、かなり本格的に描かれた作品となっておりました。
あらすじ
太平洋戦争末期の昭和19年、21歳の日本兵・田丸均は、南国の美しい島・ペリリュー島にいた。
漫画家志望の田丸はその才を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という任務に就いていた。
やがて米軍の猛攻が始まり、日本軍は追い詰められていく。
いつ死ぬかわからない恐怖、飢えや渇き、伝染病にも襲われ、極限状態に追い込まれていく中で、田丸は正しいことが何なのかも分からないまま、仲間の死を時に嘘を交えて美談に仕立て上げていく。
そんな田丸の支えとなったのは、同期でありながら頼れる上等兵・吉敷佳助の存在だった。
2人は互いに励まし合い、苦悩を分かち合いながら絆を深めていくが……。
描かれ方
本作の特徴の一つは、人物の描かれ方。
人物は全員、『ケロロ軍曹』にでも出てきそうな3頭身の親しみやすいデザインで描かれています。
それに伴い、表情や動きもシンプルな描かれ方です。
「戦争」を背景に描く作品に似つかわしくない感じはあり、緩めの見た目から戦時中を描く作品としては比較的観やすそうな感じはあります。
しかしその実、人が撃たれる・切られる・焼かれるなど、実写やリアルな絵だとなかなか描けず、カット割りなどを使うような場面でも直接描かれていることが多かったように感じます。
そのため、画がリアル寄りじゃなければ大丈夫という人はいいと思いますが、そういう情景そのものがダメという人は、むしろしんどく感じる部分はあるかも。
また、人以外の描かれ方はリアルなため、人がデフォルメされていても視覚的な状況の生々しさは十分にあると思われます。
人物の感情表現
デフォルメされているから感情が伝わりにくいのかと言うと、そんなことはありません。
むしろ、追い詰められて極限状態での心の変化や、現実を突きつけられた時の葛藤など、感情が複雑に入り乱れる状況下にあってシンプルな形状での表現は、観ている側へ分かりやすく伝えるのに一役買っているように思えます。
声優の方の演技にもそれぞれキャラクターの性格が出ており、全体的に人物の感情というのを受け取りやすいようになっていました。
功績係としての田丸の描かれ方
功績係というのが、あらすじにもある通り仲間の最後の勇姿を遺族に向けて書き記すというもの。
田丸は、序盤に事故死した同僚のことを遺族に報告のため、これを書き記すところから功績係の仕事を始める。
しかし上司より、事故死では遺族の方に示しがつかないとのことから、勇敢な死を遂げたと記してくれとの依頼を受け、それっぽいことを書くことになる。
ただその後、もしかしたら自分が聞いていた戦死者の勇姿というのも捏造されたものなのではという疑念が生まれ、心を揺さぶられる。
その後、田丸は虚偽の文面を書くという描写が無く、中盤以降は共に過ごした同僚の絵と、ありのままの特徴を手帳に記している。
これが心情の変化に基づいた描写なのかは分かりません。
ただ個人的に、田丸は任命された功績係について、思うことがあったからこそ記し方に変化があったのだと考えます。
これを考えると、この与えられた功績係として変化していく様というのを、もう少しずつ入れて欲しかったと感じます。
また、本作の過程を経て全てを終えた先に、田丸が功績係としてどういうものを描き伝えるのか、というのを見てみたかった。
総評
観る前に懸念していた、デフォルメされた人物による違和感はほぼありませんでした。
人物には親しみやすさもある反面、戦時中の生々しい感情の動きというのも感じられたように思います。
内容は特に言うことなく表現も独特で、訴えたいことが伝わる心に残る作品でした。
評点
・評点 ・・・ 4.2 / 5
・脚本 ・・・ 4 / 5
・映像・音響 ・・・ 4 / 5
・キャラクター ・・・ 4.5 / 5


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