あの「ミッドサマー」を作ったアリ・アスター監督の新作。
舞台はコロナ禍でロックダウン中のアメリカ。
邦題は「ようこそ」なんて陽気な感じを醸していますが、そんなことはありません。
アスター監督の作る陰鬱で不気味な雰囲気が遺憾無く感じられます。
ただ一方、要素が多すぎて理解が難しいと感じた作品でした。
あらすじ
2020年、アメリカ・ニューメキシコ州の小さな町エディントン。
コロナ禍のロックダウンにより息苦しい隔離生活を強いられ、住民たちの不満と不安は爆発寸前に陥っていた。
そんな中、町の保安官ジョーは、IT企業誘致で町を救おうとする野心家の市長テッドとマスクの着用をめぐる小競り合いから対立し、突如として市長選に立候補する。
ジョーとテッドの諍いの火は周囲へと燃え広がり、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上する事態となる。
一方、ジョーの妻ルイーズはカルト集団の教祖ヴァーノンの扇動動画に心を奪われ、陰謀論にのめりこむ。
疑いと論争と憤怒が渦巻き、暴力が暴力を呼び、批判と陰謀が真実を覆い尽くすなか、エディントンの町は破滅の淵へと突き進んでいく。
物語の舞台に思うこと
本作の舞台はコロナの影響でマスクの装着が義務付けられ、BLM運動も大々的に取り上げられていた2020年頃のアメリカの小さな町。
独特な雰囲気を醸し出す作品を作る監督が選んだ舞台が、現実にあった出来事を投影している街というのは面白いところ。
国が違うとはいえ、その時代にいた身としては、一歩引いた目線で改めて見てみると、どんな立場や思想であれ、当時の世間の動きというのが異様なものであったことが興味深いところである反面、怖いと感じるところでもあります。
人の陰鬱とした雰囲気
アスター監督の作品の特徴といえば、真綿で首を絞められるが如く、人が徐々に追い詰められていく様を描く、独特な不気味さ・異様さだと思っております。
本作もそれに漏れず、主人公のジョーを始め、次第に追い詰められ、或いは変容して凶行に走るという場面がありありと描かれていました。
また、ホアキン・フェニックスをはじめとする役者陣が、異常な精神状態に追い込まれていく人物をしっかりと演じ切っており、独特な雰囲気の舞台に違和感無く馴染むことによって、作品全体の異様な雰囲気を盛り上げていました。
尺のバランスが悪い
本作の構成は、前半が主人公が事を起こすに至るまでの導入、後半が事を起こしてからのトンデモ展開という感じ。
要するに、主人公が精神的に追い込まれていく過程が前半で描かれ、後半でその結果遂に・・・というところ。
その構成自体は問題ない。
ただ、前半部分の尺が長い。
およそ2時間30分の作品の1時間30分程が導入に費やされるのである。
もちろん、徐々に追い込まれていく様を描くのに、しっかり時間を使うのはアリです。
丁寧さの表れとも言えましょう。
しかし、90分は流石に長い。
昨今の中位か短めの映画なら終わっているレベルの時間だ。
何か大きな動きを期待しながら観ている者からすると、途中で飽きても仕方のない時間の取り方と言えます。
情報量が多くて複雑すぎる
一度で全部理解するのは正直難しい。
レビュー記事書いてて何ですが、正直全部は理解しきれている自信がありません。
まず、登場人物が多い。
そして、その人物達にそれぞれ結びつきがあるため、関係性が複雑になっている。
そこに思想や立場も絡んでくるから尚のこと。
さらに、本作に出てくる人物は、正直まともとは言い難い者たちばかりなので、行動原理が理解しづらかったり、いきなり行動を起こすなどがあり、状況が把握しづらい。
情報量が多いままに物語が進んでいくため、前情報が少ないほど、取り残されてしまうということがありそう。
総評
この監督が作った作品という雰囲気はよく出てて、現実にあった状況を背景に描かれる舞台は、臨場感というか、生々しさのあるもので引き込まれるものがあります。
ただ、全体を通して複雑というか独特さがありすぎてついていけなくなる部分は大いにあると思われます。
また、前述通り物語が大きく動くまでが長いため、そこまでに飽きが来てしまうこともあるかもしれません。
見に行かれる際は、ある程度の前情報を仕入れ、そういう構成なのだと理解した上で行かれた方が良いと感じます。
評価
・評点 ・・・ 3 / 5
・脚本 ・・・ 3 / 5
・役者 ・・・ 4 / 5
・演出 ・・・ 4 / 5
・分かりやすさ ・・・ 1 / 5


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