映画【8番出口】レビュー(ややネタバレ有り)

インディーゲームとして人気を博した『8番出口』を映画化した本作、果たしてどのような映像作品となったのか

8番出口のフォトギャラリー画像(1/12)|MOVIE WALKER PRESS 映画

評価

・評点・・・・・4 / 5

・感想・・・・・思っていたより良作。

鑑賞前の懸念

 「8番出口」についてはゲームの時から知っていたのですが、そのためか映画化されると聞いた際は大丈夫なのか少し心配なところがありました。

 と言うのも、ゲームにおける8番出口という作品は、設定はあるかもしれませんが主なストーリーが無く、初めに見た駅の通路とそれ以降に見ることになる通路を見比べて「異変」を探すゲームとなっています。少し語弊はあるかもしれませんが、簡単に言うと立体的な間違い探しです。

 そのため、二つほど懸念点がありました。

 一つは、原作はストーリーが無く登場人物もほぼいないため、変な肉付けがされて別物になってしまうのでは無いかという点。

 ゲーム等を元にしたものだと、尺の都合などの関係でオリジナルの話の展開やキャラクターが多数組み込まれてしまい、その結果原作の持つ魅力が消えてしまう作品があり、今回もその憂き目に合うのではないかという点。

 もう一つは、原作の内容が内容のため同じような景色ばかりを見続けることになり、視覚的に退屈なものになってしまわないかという点です。

良い点

・主人公

 主人公『迷う男』演じる二宮和也さんの演技が良く、日常の中で迷いを抱える様や異変に巻き込まれて追い込まれていく様子は、迫真であったと感じます。

 また、異変探しの際の様子も、実際に原作をプレイしている時にするであろう動きを再現しているような感じになっており、臨場感を出すのに一役買っていると感じました。

・おじさん

 原作でいつも通路を向かい側から歩いてくる『おじさん』。時に早足になり、時ににこやかに笑いかけ、時に大きくもなったりする『おじさん』。本作では原作より少しおしゃれですが、元の雰囲気はそのままに『歩く男』として登場されてます。

 さらに、今回はおじさんのストーリーも作られており、その中でおじさんはなんと感情を表現し、喋りもします。

 原作をプレイして今まで、オブジェクトか異変としかされていなかったおじさんに物語がつき、深掘りされていたのは、個人的に嬉しく思いました。

・原作の雰囲気を壊さない撮り方

 本作にはほぼカットがありません。そのため、ゲームである原作の雰囲気を壊すことなく、臨場感ある表現であったと感じました。 どういう撮り方してるんでしょうね

・3人の視点

 本作には『迷う男』、『歩く男』、『少年』の3人の人物が登場し、物語は3人の視点を順番に切り替えながら進んでいきます。

 それぞれ見たものや反応が違うことで、同じような景色が続く中でも退屈さを感じることなく見れたと思います。また、視点の転換もスムーズで違和感なく為されるため、その辺りのストレスもありませんでした。

 これにより鑑賞前に懸念点であった『視覚的に退屈なものになってしまわないか』という点が気にならなくなっていたと感じます。

気になる点

・主人公の設定と背景

 主人公の置かれている状況が少し重めに感じました。

 原作ではプレイヤー自身の主観で動いていく作品であることから、あまり具体的にせず、例えば「今の仕事や人間関係に疑問を持ち、人生に『迷う男』」というような少し軽めで汎用な背景でも今回は良かったのではないかと個人的には思います。

・異変

 原作にあったのだから、この異変は見てみたかったというものがいくつか出てこなかったのは残念な点でした。特に『タイルマン』と『ツインズ』

 ただ、原作に出てくる異変はかなりの数があるので、これを言ってたらキリがないところもありますし、いくつかの見たかった異変や新しい異変も出てきたので、それに関してはそういうものなのだと納得しております。

 反対にこれはなくても良かったと思うものは、「電気が消え、暗闇が広がった後に・・・」という異変です。

 この異変ですが、本作の中では一番ホラーな感じのものになっており、気合も入っていると感じたのですが、個人的には『8番出口』という作品にはあまり合っていない演出に感じました。

 独自の言い方で分かりにくくなってしまいますが、この異変は言わば『有機的な恐怖』という感じがします。しかし、私が『8番出口』という作品の異変に感じる魅力は『無機質な不気味さ』にあると感じております。

 そのため、この異変に関しては作風には合っていないところを感じざるを得なかったです。

・初見の人にとってのハードルの高さ

 『8番出口』に関してある程度知識のある方であれば、世界観にはスムーズに入っていけると思います。

 ただ、全く知識がない方が観た時にはどうかと考えると、少し理解しづらい部分があるように思えます。

 説明こそありますが、8番出口自体がなんなのかは分からないまま物語が進行し結末を迎えるため、この空間自体は謎のままなのだと理解していなければ、釈然としないまま終わることもあり得ます。

総評

 雰囲気もよく、予想以上に楽しめる作品でした。

 肉付けされた部分は賛否あると思われます。私は上記の部分は気になりましたが、全体的にはそこまでノイズにはなってなかったと感じます。

 ただ、楽しむためにはやはり、ある程度『8番出口』について知っておいたほうが良いと感じますので、これから観に行かれる方は原作をプレイするなどしてから鑑賞することをお勧めします。

 

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