人と記憶の物語【映画】クスノキの番人【レビュー】(+読書感想)

3.5
映画レビュー

 東野圭吾のファンタジー小説をアニメーション映画化。

 「その木に祈れば願いがかなう」と伝えられるミステリアスなクスノキと、その番人となった青年の運命を描く。

 今回は、内容よりも小説と比較した映像作品としての感想が主になります。

あらすじ

 理不尽な解雇で職を失った玲斗は、追い詰められた末に過ちを犯し、逮捕されてしまう。

 失意のなか、亡き母の腹違いの姉で、大企業・柳澤グループの発展に貢献してきたという千舟が現れ、釈放と引き換えにある条件を提示する。

 それは「月郷神社にある、祈れば願いをかなえてくれるというクスノキの番人になること」だった。

 戸惑いながらも番人になった玲斗は、千舟や、クスノキに通い続ける男・佐治寿明、そんな父の行動を不審に思う女子大生の娘・佐治優美、家業を継ぐことに葛藤する青年・大場壮貴ら、さまざまな人々と関わっていくなかで、クスノキが秘めた力の真実に近づいていく。

ヒューマンドラマ

 クスノキという奇跡を起こす木を中心に集う人たちの、「記憶」をめぐる物語。

 ただ、本作においてはクスノキ自体には「記憶」にまつわる奇跡があるものという以上のことはなく、語られることもありません。

 あくまで人同士の繋がりを描いた物語で、それをその奇跡が手助けしているといった形式。

 そういうことに関わってくることから、クスノキに関わってくる登場人物たちは、人の想いや感情に悩み、振り回されている。

 しかし、そうであるから、それぞれが独自の立場ではあるものの、人物たちに共感もできるのだと感じます。

 つまり、奇跡の力に紡がれる物語ではなく、人の感情の揺れ動きにより形作られる物語となっております。

小説と比べると、少しイメージが違うかも

 行き着く先は同じではあるものの、過程が大きく異なる場合が多い。

 登場人物の境遇やイメージも異なります。

 演出においても、玲斗が番人の役割を投げ出して逃げ出そうとするシーンや、ビルでの追いかけっこなどの目を引く場面は、小説版においてはありません。

 映画においては見せ場ではあるものの、この演出が良いか悪いかは、登場人物の印象を左右するもののため、受け取り方によっては微妙に感じるとこともあるかも。

 また、上記のようなシーンや表現は、目を引く反面、昨今のアニメーション作品ではよく観る表現のように思えます。

 一定の見栄えはしますが、新鮮味がなく、どっちつかずといった感じ。

 効果音などの音響や視覚面の効果についても、少し大袈裟なように感じます。

 全くの新しい作品であればまだいいですが、小説のイメージを持って観ると、雰囲気があっていないように思えてしまう部分があります。

登場人物の変更点

 行動や言動が違うため、登場人物も小説版とはイメージが異なります。

・玲斗

 本作の主人公。

 映画では、小説版より柔らかい雰囲気になっている。

 仕事を辞めた理由も、逮捕された理由も誰かに嵌められた結果で、全体的に取り巻く環境の被害者といった描かれ方になっている。(小説では、どちらも自発的な行動による)

 外見も、もう少し尖った感じかと思ったが、少しダウナー系といった感じ。

 しかし、その辺は映画での設定とマッチしていたので、良いと思います。

・千舟

 対して、こちらは小説版のイメージよりキツい、というかサバサバした感じが強調されている。

 扇子持ってビシィッとするような描写は、小説では無かったもの。

 映像化する上で、視覚的にキャラが分かりやすい描かれ方をしていると感じました。

・優美

 こちらは玲斗と同じく柔らかい雰囲気。

 小説だと垢抜けて大人びた大学生という印象ですが、映画だと少しあどけなさを残す印象。

 周りのイメージに合わせた感じ

・壮貴

 外見は小説でのイメージよりヤンチャな感じですが、それに対して性格や仕草はあまり尖っていない。

 総じて一番イメージ通りな印象。

次回作は・・・?

 本作には、「クスノキの女神」という続編があります。

 本編の続きになるのですが、内容はより一層「記憶」にフォーカスされたもので、切なさのある良作です。

 では、それもまた映画化の可能性があるのかというと、今のところは薄いように思えます。

 というのも、まず、本作が映像化に伴い、多く変更を加えられていますが、これは一本で完結できるように加えられたものとも思えるからです。

 また、どことは言いませんが、終盤の方で続編の最後を思わせるところもあったため、直接描かれてはいませんが、続編も包括しての一作なのではないかと推察します。

総評

 原作は、クスノキとその番人を中心に、「記憶」を主題に紡がれるヒューマンドラマ。

 奇跡の現象はあるものの、それ自体よりもそれに紐づいた人間模様が魅力です。

 小説は、映画ほどドラマティックな展開は多くないものの、少しの物悲しさと温かさは共通して感じられると思われます。

 映画は温かみが増しており、見やすく面白かった。

 ただ、演出面は少しイメージと違った感じがあったのと、昨今の映像作品としては普通な出来であったあたりには物足りなさを感じました。

評価

・評点 ・・・ 3.5 / 5

・原作・脚本 ・・・ 4 / 5

・人物・キャラクター ・・・ 3.5 / 5

・映像・音響 ・・・ 3 / 5

コメント

タイトルとURLをコピーしました